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『闇を讃えて』

闇を讃えて闇を讃えて
(2006/07)
ホルヘ・ルイス ボルヘス

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 ホルヘ・ルイス・ボルヘス(斎藤幸男訳)『闇を讃えて』水声社、2006(1969)

 ボルヘスの五冊目の詩集である。四冊目は『創造者』である。本書には「身の回りの品品」(1965)を唯一の例外として、1967年から1969年にかけて発表された作品と初出の作品が収められている。

 1967年には第三次中東戦争があり、1968年には日本で東大紛争や日大全共闘の結成があり、1969年にはボルヘスの母国アルゼンチンでE・R・PやF・A・LやF・A・Pなどのゲリラ組織の動向が人々の耳目を驚かした年だ。本書はこのような時代に生まれた詩集だ。また、本書には原著刊行の翌70年に発表されたベネズエラの批評家ギジェルモ・スクレの「闇を讃えるボルヘス」が併載されている。ボルヘス理解の一助となるだろう。

 ボルヘスの詩は、一言で言えば、読者による詩、ボルヘスであった茫洋たる読者の詩だ。あるいは、世界を夢見る読みとも言える。

 また、ボルヘス作品を通底するテーマのひとつは、あらゆる人間は自分が何者なのかを決して知りえないという確信であった。近代が盛んに喧伝する「本当の自分」がどこかにあるという発想、「透明で叡智的な主体」としての自分という考えと、ボルヘスの詩は無縁である。というより、彼はそんなものに見向きもしないのだ。

 「闇を讃えて」の「闇」とは、「盲目、老年、死の予感を表象するのみならず、真の啓示をも意味するだろう。この礼讃は世界の礼讃でもあり、その世界は傷つきやく穏やかな、複雑にして幸せな人物によって目された世界だ。即ち知であり、知の関係でもある。ここを通ってボルヘスは、その作品によって創られた真正なるペルソナへと到達するだろう」と、スクレは言う。「闇を讃えて」は本書の最後の詩である。おそらく、この本を読むには、まず最後の詩から読むべきなのではあるまいか。

 「わたしは今すべてを忘れようとする。わたしの中心に、わたしの代数学、わたしの鍵、わたしの鏡に達するのだ。わたしは誰か、今それを知るだろう」、この言葉は「闇を讃えて」の最後の言葉である。ボルヘスの秘められた願いは、詩の言葉のなかに生き残ることだ。
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プロフィール

EMI Takashi(ヒソカ)

Author:EMI Takashi(ヒソカ)
2005年に神経性疾患を発病し、体調記録をつけるためにブログを始めました。そして、読書能力の回復に伴って、本のレビューを書くようになったものの、最近は時間を作れず、やや休止中でございます。

 数年前、出版社で働くようになりました。仕事そのものが面白く、その都度自分で課題を見つけて解決するというプロセスが楽しい。
 このブログでは、「扉の開いた」言葉を求めつつ、この世界に生きる一人の人間としてキリスト教・世界に対して疑問に思うことを考察していきます。単に評論家的な批評をするのではなく、自分でできることを示せるような、自分の持ち場に立った言葉を紡いでいきたいです。

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