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『銀河英雄伝説8 乱離篇』

銀河英雄伝説 8 乱離篇 (8)(創元SF文庫 た1-8)銀河英雄伝説 8 乱離篇 (8)(創元SF文庫 た1-8)
(2008/04)
田中 芳樹

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 田中芳樹『銀河英雄伝説8 乱離篇』創元SF文庫、2008

 いよいよ”常勝”と”不敗”の最後の決戦が始まります。銀河を掌中にした皇帝ラインハルトがなお勝利できないでいる相手は、敗軍の将であり、「魔術師」と呼ばれるヤン・ウェンリー。そのヤンに勝つために、ラインハルトは帝国軍の総力をイゼルローン要塞に結集させます。戦略的に見ればこの戦争には意味がない。戦争を行う動機は、ラインハルト個人の感情に由来します。そのことは作中でも、ラインハルトの部下の何人かが諫言でもって指摘します。しかし、彼はそれを無視する。そして、今までの戦闘とは比べ物にならない戦闘が展開されます。「回廊決戦」、それが本巻の見所です。

 もちろん、役者は、ラインハルトとヤン双方の陣営に限られません。地球教の暗躍、テロリズム、フェザーンの黒狐ことルビンスキーの動向、ヨブ・トリューニヒトの処遇。陰謀の全ての糸は詳らかにされない。

 そして、この巻では重大な出来事が起こります。それを超えて、ラインハルトはどうなるのか。そして、共和政の理念を守っていくためにユリアンたち不正規部隊はどんな歩みをするのか、続きが楽しみです。

 今作では帝国軍軍務尚書のオーベルシュタインがあまり出てきません。そうかといって何もしていないわけでもなさそうです。

 本作はエンターテインメントとして申し分なく、また一つの転機も描かれているだけに感慨深いものがあります。ただ、一点だけ不満を述べれば、解説は蛇足です。解説者は、「銀英伝」に戦争の具体相がないことを縷々述べますが、重箱の隅を突くの感を拭えず、「解説」の体をなしていない。本作品の楽しみを増す書き方というより、いささか解説者の個人的趣味に偏った「解説」で、果たして必要だったのか疑問です。
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プロフィール

EMI Takashi(ヒソカ)

Author:EMI Takashi(ヒソカ)
2005年に神経性疾患を発病し、体調記録をつけるためにブログを始めました。そして、読書能力の回復に伴って、本のレビューを書くようになったものの、最近は時間を作れず、やや休止中でございます。

 数年前、出版社で働くようになりました。仕事そのものが面白く、その都度自分で課題を見つけて解決するというプロセスが楽しい。
 このブログでは、「扉の開いた」言葉を求めつつ、この世界に生きる一人の人間としてキリスト教・世界に対して疑問に思うことを考察していきます。単に評論家的な批評をするのではなく、自分でできることを示せるような、自分の持ち場に立った言葉を紡いでいきたいです。

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