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『定本 夜戦と永遠(上)―フーコー・ラカン・ルジャンドル』

定本 夜戦と永遠 上---フーコー・ラカン・ルジャンドル (河出文庫)定本 夜戦と永遠 上---フーコー・ラカン・ルジャンドル (河出文庫)
(2011/06/04)
佐々木 中

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 佐々木中『定本 夜戦と永遠(上)―フーコー・ラカン・ルジャンドル』河出文庫、2011

 本書は、2008年に以文社より刊行された『夜戦と永遠――フーコー・ラカン・ルジャンドル』に、補論「この執拗な犬ども」を付して定本としたものである。上巻では、ラカンの理路を一から辿り直し、ルジャンドルとベンスラマの論述を辿りつつ、<鏡>という装置、女性の享楽、読むことと書くこと、疎隔、根拠律、系譜原理、世俗化について考究されている。

 著者は、「ラカンはこう言った」「フーコーは生存の美学を称揚していた」という世に広く行きわたった言説を、本当に彼らがそう言ったのかどうかを原典に遡って辛抱強く確かめる。それゆえ、そこかしこで性急さを戒める。「焦慮は罪である」というカフカの言葉に著者は最後まで忠実だ。

 しかも真っ当な結論にいたるまで、徹底的に原典に準拠して、一つ一つ退路を断っていき、きちんと調べてみると、思想家はそんなことは言っておらず、そんな理屈はどこから来たのかさっぱりわからないと時に意地悪に詰めて行くというとても真っ当な戦いの手順を踏んでいる。この手順自体は珍しいものではなく、およそ何かに準拠して事柄を論ずる営みにとっては至極当たり前のことだ。ただ、性急に結論を求めてしまう今の御時世からすると、珍しく感じられるかもしれない。

 とはいえ、本書は、フーコーとラカンとルジャンドルについての専門的解説書ではない。「フーコー・ラカン・ルジャンドル」は、副題であることに注意しよう。むしろそう考える人、哲学の専門教育を受けていなければ読めない本だというのは、読者の能力を低く見積もり、読者を見下す考えである。著者はそうした態度とは無縁である。読者への敬意、それもまた著者が最後まで持ち続ける態度だ。

 自分の見方では捉えきれないものが世の中にあり、自分の見方が相対化され、作りなおされることを経験してきた人は本書を読めるだろう。たとえ今、歯が立たなくても、必ず読める時が来る。反対に、これをラカンとフーコーとルジャンドルについての専門的解説書と考え、これを読めば一望俯瞰的に現代思想を論じられる地点に立つことができ、全てを語れるようにしてくれる本だと考える人はおそらく「読めない」。そういうファルス的享楽を真っ先に批判する本なのだから。より根本的に言えば、自分の見方を後生大事に掌中から手放そうとしない人には、ついに無縁な本である。その見方を手放して、どこに行き着くのかもわからない、当て処もない冒険に出る勇気があるかないか。本書を読むのに必要なのは、勇気と書かれていることを真に受けること、それだけだ。

 テクストを「読む」ことは、知識や情報を得ることだという信憑の持ち主はこの本から離れることをお勧めする。同様に、「本は情報の宝庫である」という考えの持ち主も手に取らない方がいいだろう。その意味では、全く「役に立たない」本だからだ。少なくとも便所ブラシのようには役に立たない。ドゥルーズ曰く、「堕落した情報があるのではなく、情報それ自体が堕落なのだ」。この言葉に唱和する本書に、そんな考えの入る余地はない。

 上巻ではルジャンドルの理路を辿って終わる。そして、下巻に入り、長く長くフーコーの理路を辿る旅が始まる。著者は我々をどこへ連れていこうと言うのか。まだ何かを言うのは早過ぎる。重厚な原典準拠に支えられた強靭な論理が流麗な文体で舞う様を読者は見るだろう。言葉とは本来何であるかをこの本は思い出させてくれる。
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EMI Takashi(ヒソカ)

Author:EMI Takashi(ヒソカ)
2005年に神経性疾患を発病し、体調記録をつけるためにブログを始めました。そして、読書能力の回復に伴って、本のレビューを書くようになったものの、最近は時間を作れず、やや休止中でございます。

 数年前、出版社で働くようになりました。仕事そのものが面白く、その都度自分で課題を見つけて解決するというプロセスが楽しい。
 このブログでは、「扉の開いた」言葉を求めつつ、この世界に生きる一人の人間としてキリスト教・世界に対して疑問に思うことを考察していきます。単に評論家的な批評をするのではなく、自分でできることを示せるような、自分の持ち場に立った言葉を紡いでいきたいです。

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