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『恋する原発』

恋する原発恋する原発
(2011/11/18)
高橋 源一郎

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 高橋源一郎『恋する原発』講談社、2011

 この本はとんでもない問題作です。脳天を揺さぶられる。あまりのばかばかしさに爆笑させられる。こんなことまで言っていいのかとおろおろさせられる。おろおろするのです。

 粗筋は、AV監督がチャリティAVを撮って世界を救うという話です(ビバ!AV的民主主義。ここに真の民主主義とヤスクニがある)。ばかばかしい。そんなのあるわけない。そう思って、粗筋を聴いた時点で投げ出したくなる人がいるでしょう。あまりのあからさまな表現に激怒する方もいるかもしれません。ですから、一つだけ予告しておきます。投げ出すのは200頁以降を読むまで待って下さい。しかし、そこまで読んだらあとは最後まで行くしかなくなります。行って行ってイクのです。

 最初にこう書いてあります、「いうまでもないことだが、これは完全なフィクションである。もし、一部分であれ、現実に似ているとしても、それは偶然にすぎない。そもそも、ここに書かれていることが、ほんの僅かでも、現実に起こりうると思ったとしたら、そりゃ、あんたの頭がおかしいからだ。 こんな狂った世界があるわけないじゃないか。すぐに、精神科に行け!いま、すぐ!それが、おれにできる、唯一のアドヴァイスだ。」と。

 作者はおそらく本当はこう言いたかったのです、「あんたの頭がおかしいか、それとも世界がおかしいか、その狭間で揺れ動け」と。というのも、どちらか一方が狂っているのはよくある話だからです。そんなありきたりの話を、今この時に作者が書くわけがありません。ばかばかしいのは見かけだけで、タイトル、構成、中にある文学論、全て緻密に計算されたものです。それでいながら、アドリブを繰り出しているように見える。まさに、美学的概念のスプレッツァトゥーラ(sprezzatura)、つまり「計算された無頓着さ」です。作者に満腔の敬意を表します。

 一つだけ注意をします。食事中に片手間に読むのだけは決してお勧めしません。
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プロフィール

EMI Takashi(ヒソカ)

Author:EMI Takashi(ヒソカ)
2005年に神経性疾患を発病し、体調記録をつけるためにブログを始めました。そして、読書能力の回復に伴って、本のレビューを書くようになったものの、最近は時間を作れず、やや休止中でございます。

 数年前、出版社で働くようになりました。仕事そのものが面白く、その都度自分で課題を見つけて解決するというプロセスが楽しい。
 このブログでは、「扉の開いた」言葉を求めつつ、この世界に生きる一人の人間としてキリスト教・世界に対して疑問に思うことを考察していきます。単に評論家的な批評をするのではなく、自分でできることを示せるような、自分の持ち場に立った言葉を紡いでいきたいです。

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