Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://takashidokoka.blog118.fc2.com/tb.php/1480-325a1b77

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

『「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」 ベトナム帰還兵が語る「ほんとうの戦争」』

「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」 (シリーズ・子どもたちの未来のために)「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」 (シリーズ・子どもたちの未来のために)
(2003/07/31)
アレン・ネルソン

商品詳細を見る


 アレン・ネルソン『「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」 ベトナム帰還兵が語る「ほんとうの戦争」』講談社、2003

 1965年、戦争が何かを知らなかった18歳の青年は海兵隊に入って様々な戦闘訓練を受けた。海兵隊での訓練の目的は身体的な能力の向上と共に、人を殺すことを何とも思わない心をつくりあげることにあった。やがてベトナム戦争に従軍し、初めて人を殺す。そして、著者は女性も子供も老人も平気で殺せるモンスターに変わっていく。沖縄での訓練においても、またベトナムにおいても、そこにいる人々は海兵隊にとって「人間」ではなかった。著者は考えることも感じることもやめ、上官の命令を遂行するマシーンとなる。本物の戦争は戦争映画とは違う。

 しかし、著者に転機が訪れる。捕まえたベトコン男性がよく理解できる英語で言った言葉が、著者に衝撃を与える。「なぜ、あなたたちはわたしの国にいて、わたしたちを殺しているのですか?わたしたちは自由のために闘っています。あなたたち黒人も自分の国では自由すらないではありませんか」。そして、ベースキャンプに戻ってみて、基地の中ではアメリカ合衆国の国旗よりも、南北戦争時の南軍の旗の方が多いことに著者は気付く。また、最前線の兵士にはなぜか黒人が多いことにも気づく。当時のアメリカ国内は、人種差別に抗議し、社会での平等を求める公民権運動がピークを迎えていた頃であり、また非暴力の人種差別反対運動を指導したキング牧師も存命であった。故国においても戦場においても、黒人は不当に抑圧されていたのだ。

 書名は目を引く。著者にとって運命的なこの問いに答えることから、戦争の本質を語るという困難な務めは始まった。同時にそれは、著者自身が自分の中にある闇を直視することでもあった。それはとても勇気のいることだ。

 ベトナムから故国アメリカに戻った後、著者は戦場の悪夢に毎晩悩まされるようになる。そして、家族とも離れ、ホームレスとして過ごす。ある日、小学校の教師をしている高校の同級生に会い、彼女から小学校でベトナム戦争の体験を話してくれないかと頼まれる。最初は断るものの、子供たちの絵や手紙に希望を感じ、引き受ける。

 小学校では評論家や統計学者のように戦争のことを語る。しかし、自分のしたことは語らなかった。質疑応答の時、書名にある運命的な質問がある少女から出される。著者は臓腑を殴られたような痛みを覚え、しばらく瞑目した後、「YES」と答える。しかし、まだ目は開けられない。いや、開けることができなかった。自分に向けられている恐れや憎しみに満ちた視線に直面することになるだろうと思ったからだ。そんな著者を、少女は涙を流しながら抱きしめる。ここに許しの出来事がある。私は泣いた。何度読み返しても泣いてしまう。いや、著者の証言を全て読んだ後に改めてここを読み返すと、著者にとって何よりも求めていた救いがここにあることがはっきりとわかる。

 著者は淡々と自身の戦争体験を語る。誇りも衒いもしない。戦場に行く前の気持ち、戦地に着いた時の気持ち、初めて人を殺した時の感情、それらがうまく説明のできないものであっても、飾らず隠さず弁明もせず、率直に告白する。

 更に、戦争が兵士にさせられた人間をいかに損なうかを語るだけではない。本書は、沖縄の人たちがどんな苦痛を味わってきたかも語っている。著者は沖縄の人たちがどう思うかという視点が自分たち海兵隊に欠けていたことを率直に認める。著者が行ったのは、日本返還前の沖縄だ。アメリカの海兵隊は沖縄でとても無体なことを沖縄の人々に行った。そして、それは過去のことではなく、根本的には今もおそらく変わっていない。本土に暮らす日本人として、そのことから目を背け、他人事のように米軍基地や戦争について語ることは、もはやできない。それは無知を通りこして無恥ですらある。

 本書に記されているのは、戦争がどれほど人間を損なうかという証言だ。むごい話もたくさんある。しかし、この証言から目と耳を逸らすことはできない。非常に語りにくい真実を著者は語っている。私はそれを受け止めたい。

 この本に出会って良かったと思う。この本には、平然と殺人のできるモンスターになった人が、それでも人間らしさを取り戻したという痛苦な魂の記録が語られているだけでなく、互いに傷つけあうことのない平和な世界を希求する祈りがある。
関連記事
スポンサーサイト
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://takashidokoka.blog118.fc2.com/tb.php/1480-325a1b77

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

EMI Takashi(ヒソカ)

Author:EMI Takashi(ヒソカ)
2005年に神経性疾患を発病し、体調記録をつけるためにブログを始めました。そして、読書能力の回復に伴って、本のレビューを書くようになったものの、最近は時間を作れず、やや休止中でございます。

 数年前、出版社で働くようになりました。仕事そのものが面白く、その都度自分で課題を見つけて解決するというプロセスが楽しい。
 このブログでは、「扉の開いた」言葉を求めつつ、この世界に生きる一人の人間としてキリスト教・世界に対して疑問に思うことを考察していきます。単に評論家的な批評をするのではなく、自分でできることを示せるような、自分の持ち場に立った言葉を紡いでいきたいです。

最新トラックバック

月別アーカイブ

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。