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『この世の全部を敵に回して』

この世の全部を敵に回して (小学館文庫)この世の全部を敵に回して (小学館文庫)
(2012/04/06)
白石 一文

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 白石一文『この世の全部を敵に回して』小学館文庫、2012

 読み始めると、反発を覚え、あるいは反論したい思いを禁じ得なくなる。しかし、それでも読み進んでしまう。反発を覚えつつも、書き手の言葉を首肯する自分がいる。引っかかりを覚えながらも、ページを繰る手が止まらない。
 
 本書は入れ子構造になっている。著者の友人が記した手記を、著者が出版したという体裁をとっている。だから、その手記に記されたことを著者の考えと同定するのは早計だろう。

 また、「内容にはさまざまな異論もあるし、矛盾した記述も冒頭よりかなりの頻度で散見される」と刊行者の言葉で、語り手は書いている。そう、反発されるであろう内容だということは、最初から告げられているのだ。それでも敢えて、「どうしてもこの手記を二十歳前後の若い人々に手渡したい」と「僕」は考え、原稿を編集者に託す。

 結局、幾度も反発を覚え、「それは違うのではないか?」という気持ちをたびたび感じながらも、最後まで読んでしまった。それは、細かな反論を数多く心中で唱えたにもかかわらず、この手記にはそうした反論を超えさせる何かがあるからだ。

 本書は結論が予想できるようで、できない。ある考えを述べていると思ったら、すぐにそれに書き手自身が反論を加える、そんなことがよくあるからだ。最後まで読むしかない。

 読みながら、旧約聖書の「コヘレトの言葉」という文書を私は想起した。この世において最も確かなものは何かを探究する、コヘレトという男の思索という体裁の文書だ。コヘレトも断定する。しかし、すぐにそれを自分で覆す。それもまた覆す。そうした果てにコヘレトがたどりついたものは何だったのか。それは本書の結論とどこかで通じているような気がする。それが何かは本書をお読みください。

 「こわもての題におじけづくことなく、また反対にいたずらに刺激的なものを期待することなく、この本を真に求める人たちが、どうか無事、この本にめぐりあうことができますように」と解説に記された川上弘美さんの祈りを、私も共に祈りたい。この世界と生への呪詛めいたことを記しながらも、理不尽を真摯に描きながらも、なお人を生き得るものにさせるもの、その探究をする著者に巡り合えたことを感謝したい。
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プロフィール

EMI Takashi(ヒソカ)

Author:EMI Takashi(ヒソカ)
2005年に神経性疾患を発病し、体調記録をつけるためにブログを始めました。そして、読書能力の回復に伴って、本のレビューを書くようになったものの、最近は時間を作れず、やや休止中でございます。

 数年前、出版社で働くようになりました。仕事そのものが面白く、その都度自分で課題を見つけて解決するというプロセスが楽しい。
 このブログでは、「扉の開いた」言葉を求めつつ、この世界に生きる一人の人間としてキリスト教・世界に対して疑問に思うことを考察していきます。単に評論家的な批評をするのではなく、自分でできることを示せるような、自分の持ち場に立った言葉を紡いでいきたいです。

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