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『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け (上)』

この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 上 (講談社文庫)この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 上 (講談社文庫)
(2011/12/15)
白石 一文

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 白石一文『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け (上)』講談社文庫、2011

 主人公は雑誌編集長のカワバタ。登場人物の名はすべてカタカナで表記される。名前などには多分意味がないのだ。だからなのか、人間そのものにはリアリティを感じられない。他方で、この作品が描く世界には強いリアリティを感じる。

 ところどころで引用がなされる。引用という仕方で、登場人物の台詞で、主人公の思考で、欺瞞と暴力と死に満ちたこの世界のありようが描かれる。主人公の生きている世界と読者の生きている世界は同じだ。少なくとも、自分のことを棚上げして読める小説ではない。いや、作者はむしろ、利己的で、自分以外のことに無関心で、「棚上げ」の得意な私達の本質を執拗に静かに描く。

 暴力と欺瞞と死と恐怖に支配されたこの世界を描くことで、しかし「だから好き勝手に生きよう」とか「諦めろ」ということを、この作品は言いたいのではない。

 その証拠に、作者は、カワバタに仏陀の厳しさを紹介させたり、マザー・テレサの生き方への共感を吐露させたりもしている。カワバタはそのようには生きられない自分であると鋭く自覚している。しかし、この世界から貧困を撲滅し、恐怖や暴力や戦争を終わらせるにはマザー・テレサのようなアプローチ以外は、多分有効でないのだ。

 人によっては作中人物のふるまいや引用に喝采を送るだろう。しかし、また人によっては自分が批判され責められているようにも感じるだろう。自分と関係のある話と読むか、自分と無関係な、どこか別の世界の話と読むか、それは読者の自由だ。私自身は、読みながら「そうだ、そうだ、この世界は歪んでいる」と叫びを上げずにはいられなかった。この叫びが止むのか、それは下巻を読むまでわからない。
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プロフィール

EMI Takashi(ヒソカ)

Author:EMI Takashi(ヒソカ)
2005年に神経性疾患を発病し、体調記録をつけるためにブログを始めました。そして、読書能力の回復に伴って、本のレビューを書くようになったものの、最近は時間を作れず、やや休止中でございます。

 数年前、出版社で働くようになりました。仕事そのものが面白く、その都度自分で課題を見つけて解決するというプロセスが楽しい。
 このブログでは、「扉の開いた」言葉を求めつつ、この世界に生きる一人の人間としてキリスト教・世界に対して疑問に思うことを考察していきます。単に評論家的な批評をするのではなく、自分でできることを示せるような、自分の持ち場に立った言葉を紡いでいきたいです。

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