Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『遺書 関東連合崩壊の真実と、ある兄弟の絆』


遺書 ~関東連合崩壊の真実と、ある兄弟の絆~遺書 ~関東連合崩壊の真実と、ある兄弟の絆~
(2014/04/18)
瓜田純士

商品詳細を見る



 瓜田純士『遺書 関東連合崩壊の真実と、ある兄弟の絆』太田出版、2014

 2012年9月にフラワー事件というのが起きた。無関係の一般人が約10人の男から棒のようなもので殴られ、殺害された事件である。それに関わったとされるのが関東連合のメンバーだった。関東連合の本来の標的はK村兄弟だった。被害者は両者と無関係の人である。

 著者にとって、関東連合の人々は「地元の先輩たち」であり、この本のもうひとつの主役K村兄弟は親友だった。その両者の抗争の過程で、フラワー事件は起きた。それが、なぜ、どのような過程を経て起きたのか、また両者の内在的論理の違いを、明晰な筆致で記している。そこには、同じ時と場、地元の先輩たちや親友と共に生き、両者を間近で見てきた人間として、自分が知る真実を記すことで、争いに終止符を打ちたい、そのことを言わずには死んでも死にきれない、という強い思いが脈動している。

 当事者にしか言えない言葉がある。当事者だからこそ、語れる言葉がある。本書は、そんな真摯な言葉に満ちている。

 記述の仕方は明瞭、かつ、公正である。重い内容であるにもかかわらず、ぐいぐい読ませる。背景の説明が巧みで、よくわかる。特定の誰かを描くとき、どんな人物かを、エピソードを交えて生き生きと描く。過失を記すとしても、裁きの眼差しではなく、起きたことだけを静かに記す。同時に、自身の過失を叙述するのも忘れない。

 「僕」という一人称を多用しているものの、自己主張の響きはかけらもなく、いかなる意味の自己弁護も擁護もない。内輪の暴露という響きもない。憶測や伝聞ではなく、ただ自分の知る限りの真実と経験だけを淡々と記す。だからこそか、自分にとってかけがえのない人々が争い合うことへの悲しみ、もっと何かできなかったのかという悔いがまざまざと伝わってくる。何かを主張することよりも、ここに記された言葉が読まれて、争いがなくなること、それが著者の強い切実な願いである。

 第四章で著者は、親友であるK村泰一郎氏の素顔が関東連合に全く伝わっていないことを遺憾に思い、二つのエピソードを書いている。その内の一つに、深い印象を抱いた。18歳の頃、泰一郎氏が好きになりかけた女性は、以前の交際相手室井氏と別れた後でも、室井氏との思い出を大切にしていた。泰一郎氏もそのことを尊重されていた。ある日、室井氏が病死してしまう。彼の家庭の事情で、葬儀をあげられる状況ではなかった。そこで泰一郎氏は葬儀委員長をかって出て、全ての段取りを整え、葬儀をあげた。このことを記した後、「18歳で、好きになりかけている女の子の元彼を見送るために、面倒な段取りを全てこなし、抗争の垣根を越えて葬儀を執り行う。そんなことのできる男は、そうはいないだろう」と著者は書いている。K村泰一郎という人の、畏敬すべき面を見たように感じた。

 普段、この種の本は手に取らない。なぜ手に取ったのか。4月30日(水)夕方、約束の時間まで余裕があり、神保町のある本屋に寄った。新刊棚を何気なく見ると、著者の名が目に飛び込んできた。表紙写真とタイトルを見た時は半信半疑になったものの、プロフィールと中学時代の写真を見て、確信した。小学校の同級生の彼である、と。彼が書いたこの本に出会った縁をなかったことにはできない、だから、読んだ。筆力、叙述の巧みさ、伝わってくる律動に瞠目した。今では、出会うべくして出会ったようにも感じている。

 関東連合及びK村兄弟と間近で接してきた人間の貴重な証言であると共に、本書は私にとって、かつての同級生が歩んだ道程を教えてくれるものであった。

 最後に、著者の意向により、本書の著者印税が全額、犯罪被害者遺族支援のために寄付されることを記して、擱筆する。
関連記事
スポンサーサイト

Appendix

プロフィール

EMI Takashi(ヒソカ)

Author:EMI Takashi(ヒソカ)
2005年に神経性疾患を発病し、体調記録をつけるためにブログを始めました。そして、読書能力の回復に伴って、本のレビューを書くようになったものの、最近は時間を作れず、やや休止中でございます。

 数年前、出版社で働くようになりました。仕事そのものが面白く、その都度自分で課題を見つけて解決するというプロセスが楽しい。
 このブログでは、「扉の開いた」言葉を求めつつ、この世界に生きる一人の人間としてキリスト教・世界に対して疑問に思うことを考察していきます。単に評論家的な批評をするのではなく、自分でできることを示せるような、自分の持ち場に立った言葉を紡いでいきたいです。

最新トラックバック

月別アーカイブ

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。